ふいちゃんの中国日記

ふいの中国語講座/諺・格言

第三十六計 走為上

2012年1月23日

「三十六計 逃げるが勝ち」という言葉は年配の人ならほとんどの方がご存知だろう。わたしも小さい頃から知っていたように思う。場合によっては「三十六計 逃げるに如かず」とも言われるが意味は同じである。しかし、本当の意味を知ったのは最近のことである。

手元に「三十六計」(島村義著:ダイヤモンド社)という本があって、本棚を整理していて出てきたのである。購入年月日に昭和58年3月1日と記入があるからざっと29年前の購入だ。再び読み直してみるとなかなか面白い。

中国で出版された本には中国語で説明があるのであろうが、日本人向けの本であるから当然ながら中国語はほとんどない。だから、この章も中国語は「三十六計 走為上」だけである。

「三十六計」は「第一計」から「第三十六計」まであって、第一部から第六部まで各部は「六個の計」の合計「三十六個の計」で構成されている。そして、この「三十六計」は道徳の教えとかの類本ではなく、戦いに勝つ為の謀略の書なのだという。

そして多くの中国人がこの書を日常的に読み、現在の商売をどう生き抜いて成功するかの指針にしているのだという。「三十六計」の中身などほとんど知らない日本人と、場合場合により今回は「第○○計」で行こうなどと考える中国人とでは発想の違いは明らかであろう。

「走 zou3 ぞーう」は元来「その場からいなくなる」という意味である。だから、日本語に訳すと状況により「帰る」という意味にもなり、「歩く」、「出発する」等たくさんの言い方になるのである。ここでは「逃げる」である。

「為 wei2 ウエイ」はこの場合、2声で「ーーとみなす」、「ーーである」の意味。「上 shang4 シャン」にはわたしなどいまだ理解できていないたくさんの意味があるが、ここでは「上級、上等」と解してよさそうだ。著者はここを「逃げるが上策」と訳している。

説明によると、圧倒する敵に対して三通りの対処方法がある。「降伏」、「和睦」、「逃げる」である。降伏は全敗、和睦は半敗であるが、逃走は未敗である。これは「いつの日か勝利をつかみ取る転機を潜めている」という。

日本では「夜逃げ」は褒められた言葉ではないが、中国では「ここは一端身を隠し、再起をはかってから迷惑かけた分をあとでお返しする」という発想らしいから日本とぜんぜん違う。

リーマンショックで景気が悪くなったとき、山東省に進出していた韓国企業(農業関係)がたくさん夜逃げした話は有名であるが、韓国では「夜逃げ」はどう解釈されているのであろうか。中国と陸続きで距離的にも日本よりはるかに近い朝鮮半島ではより中国的な解釈であってもおかしくはないのだ。

大連日本商工会の方々はあのとき、「仮に倒産するようなことがあっても日本企業は決して“夜逃げ”などしません」と言っていたらしいが、それを聞いた大連政府の要人達はいったいどのように感じていたのであろうか。言う方は日本人の考え方で、「夜逃げ」は悪と思って言っているのだし、聞く方は「夜逃げ」は悪とは思わず、経営の一つの方法と思って聞いていたとしたら、その両者間のギャップは相当なものである。

(註)三十六計 san1 shi2 liu4 ji4 さん しい りゅう じい 三十六計